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大地の芸術祭の総合ディレクター、北川フラムさんは、長い間、現代美術の活動に止まらず、音楽、出版、など多岐にわたる活動をして来た方。他の芸術祭ディレクターとのバックボーンの広さの違いが、この芸術祭の特徴になっていますが、その一つが、子供の視点。絵本に関わり、子供とアートをつないだ活動が生きています。

2018  須佐美彩 「かんがえない」(現存せず) 

2012年の芸術祭で、まつだい農舞台に展示され、2018年の芸術祭から川西のナカゴグリーンパークで定期的に行われている「里山アートどうぶつ園」(年によって名称に違いあり)。タイトルを見たときは、ベタな感じで迷いましたが、訪れればかなり楽しい。アーティスト一人一人が、かわいいから不気味まで、自分の表現方法で動物アートをつくり、多様でありながらわかりやすい。子供が楽しみながら、初めてアートに触れるのにふさわしく、想像力を広げるきっかけとなりそうです。

田島征三さんの「絵本と木の実の美術館」も、初めて訪れたとき、頭をリセットするのに時間が掛かった作品。田島さんの絵本をイメージして行くと、原画でも原画を立体化したものでもなく、大半を流木でつくった物語の場面のインスタレーションが、廃校の体育館から教室まで埋め尽くしていました。いわゆる現代美術に比べ、素朴で粗さがあって、ピュアなのか雑なのか、すごいのか微妙なのか混乱します。それに、海ではないのに、なんで流木?そういうときは他者の反応を観察するもの。子供たちは、理屈など付けずに、素直に楽しんでいます。子供には、絵本と同じでストレートに響く作品で、大人の中途半端な現代美術の知識の呪縛が、楽しむことを邪魔していたようです。

現代美術一本槍のディレクターだと、先鋭的な作品が集まり、それはそれでおもしろいものの、特権的な美術愛好者のための場となりがち。そういう大人的思考に毒されたスノッブの洗脳を解くのが子供の視点で、そういう視点をためらわずに持ち込めるのが、北川フラムさんの強さ。

2018年に、十日町の街中で配っていた「Art Map Word」。妻有のアートのお薦めを、約10人の市民が紹介する地元製のフリーペーパーです。驚いたのが、小学2年生の紹介するベスト作品の1位が、クリスチャン・ボルタンスキーさんとジャン・カルマンさんの「最後の教室」だったこと。暗く、重い不在を描いた作品をいちばん好きという小学生は予想外。生まれたときから、芸術祭の中で成長した子供達からは、高い確率で、目の肥えた、そして、子供と大人を行き来できる美術愛好家が輩出されそうです。

2018  「里山アートどうぶつ園 2018」(現存せず) 
2018年に川西のナカゴグリーンパークで行われたアーティストによる動物園。
日本語ウェブサイト

2018  里山アートどうぶつ園の様子(現存せず) 
2018  石村大地 「好きを集める」(現存せず)  
2018  岡山富男 「サーカス」(現存せず)  
2018  岡山富男 「サーカス」(現存せず)  
2018  辻蔵人 「ソラウマ」(現存せず) 
2018  松本勇馬+わらアートJAPAN 「見島牛」(現存せず) 
2018  平澤勇輝 「ともだち」(現存せず) 
2018  きゃねこ+山下若菜 「オスピトコンタ2」(現存せず) 
2018  開発好明 「モグラトンネル」(現存せず) 

2022  「里山アートどうぶつ園ーどうぶつたちのソーシャルディスタンス 2022」(現存せず)
2022年に川西のナカゴグリーンパークで行われたアーティストによる動物園。

日本語ウェブサイト

2022  宇代藥 「Anubis」(現存せず) 
2022  中山桃慧 「ベンガルトラ」(現存せず) 
2022  内田望 「Rhino with Askari wa kirfaru」(現存せず) 
2022  小野養豚ん 「...pigeep...pigeep..」(現存せず) 
2022  木村剛士 「犬像4250」(現存せず)  
2022  柴田早穂 「見えている世界はほんの少しだけ」(現存せず) 
2022  ジェームズ花蓮 「con・nect・ed」(現存せず) 
2022  金龍主 「장산범 - 萇山虎 -」(現存せず) 
2022  奥西祥子 「おもい」(現存せず) 

2024  「Nakago Wonderland–どうぶつ達の息吹と再生 2024(2024年の会期中公開)
2024年に川西のナカゴグリーンパークで行われたアーティストによる動物園。
in 2024.
日本語ウェブサイト

2024  ナカゴグリーンパークの様子(2024年の会期中公開)。
2024  ナカゴグリーンパークの様子(2024年の会期中公開)。
2024  大谷桜子 「うさぎ」(2024年の会期中公開)
2024  中里繪魯洲 「くるくるさんば」(2024年の会期中公開)
2024  五月女かおる 「食事の風景」(2024年の会期中公開)
2024  島田忠幸 「目指せ13m、ツチブタ、オナガザル、テナガザル」(2024年の会期中公開)
2024  早川鉄兵 「アニマルピクニック」(2024年の会期中公開)
2024  早川鉄兵 「アニマルピクニック」(2024年の会期中公開)
2024  岡本光博 「トラロープ」(2024年の会期中公開)
2024  大曽根俊輔 「キリン舎オオサンショウウオ館」(2024年の会期中公開)
2024  石橋幸大 「モノの移行」(2024年の会期中公開)
2024  関口恒男 「越後妻有レインボーハット2024」(2024年の会期中公開)

2009  鉢&田島征三 「絵本と木の実の美術館」(冬を除き公開中) 
十日町の鉢集落にある廃校となった小学校を使い、鉢集落の人々と田島さんが一緒につくり上げた美術館。最後の生徒と学校に住みついているオバケたちが繰り広げる物語が、小学校全体に展開し、大きな立体的な絵本の空間を出現させる。施設の改修設計は、山岸綾さん、久保田街香さんによる。
日本語ウェブサイト
https://maps.app.goo.gl/uY92MQj4fjQoJYTt6

2018  ART MAP WORD 
十日町の街中で配っていた「Art Map Word」。妻有のアートのお薦めを、約10人の市民が紹介する地元製のフリーペーパー。小学2年生の紹介するベスト作品の1位が、クリスチャン・ボルタンスキーさんとジャン・カルマンさんの「最後の教室」だった。

小学2年生の紹介するベスト1の、クリスチャン・ボルタンスキーさんとジャン・カルマンさんによる「最後の教室」。

2018  田島征三 「カラダのなか、キモチのおく。」(現存せず) 
絵本と木の実の美術館の屋外につくった作品。詩人アーサー・ビナードと一緒につくった「マムシ」をテーマにした屋外の空間絵本。
日本語ウェブサイト

2015  ジミー・リャオ 「Kiss & Goodbye(土市駅)」(冬を除き公開中) 
妻有でよく見掛けるかまぼこ型の車庫をモチーフにした展示スペースが、飯山線の土市駅と越後水沢駅に設置され、内部には、飯山線を舞台にしたリャオさんの絵本「幸せのきっぷ Kiss & Goodbye」に基づく絵や登場人物のオブジェ、映像が、展示されている。
日本語ウェブサイト
https://maps.app.goo.gl/fFLS8Brd4rNT7HyX6

2015  ジミー・リャオ 「Kiss & Goodbye(越後水沢駅)」(冬を除き公開中) 
妻有でよく見掛けるかまぼこ型の車庫をモチーフにした展示スペースが、飯山線の土市駅と越後水沢駅に設置され、内部には、飯山線を舞台にしたリャオさんの絵本「幸せのきっぷ Kiss & Goodbye」に基づく絵や登場人物のオブジェ、映像が、展示されている。
日本語ウェブサイト 
https://maps.app.goo.gl/Yn5vprFa6MvxUa6Y8

2021  原倫太郎+原游 「妻有双六」(冬を除き公開中) 
津南の結東集落にある旧小学校を宿泊施設に改修した「かたくりの宿」、その体育館に設置された作品。秋山郷の風景を双六に仕立て、体育館に元からあったバスケットゴールやピアノなどを、その中に取り込んで、双六で進むと、それらに絡む遊びや動きが指示される。大人だらけの友人ツアーの参加者一行は、嬉々として、遊びに興じていた。
日本語ウェブサイト 
https://maps.app.goo.gl/Yn5vprFa6MvxUa6Y8

2024      原倫太郎+原游ほか 「モネ船長と87日間の四角い冒険」(2024年の会期中公開) 
越後妻有アートトリエンナーレ2024のメイン会場の一つ、キナーレの回廊を利用して行われたグループ展示。原倫太郎さんと原游さんがキュレーターとなって、11組のアーティストが参加。来場者参加型の作品も多く、子供や家族連れが楽しんでいた。子供も参加できる作品が多かったせいか、例年に比べ、キナーレを訪れる人の数をかなり多く感じたが、原倫太郎さんのFACEBOOKによれば、キナーレにある越後妻有里山現代美術館 MonETの入場者数は、前回の3倍となったそうである。
日本語ウェブサイト

2024  原倫太郎+原游 「阿弥陀渡り」(2024年の会期中公開)
2024  加藤みいさ 「溢れる」(2024年の会期中公開)
2024  ヌーメン/フォー・ユース 「Tape Echigo-Tsumari」 (2024年の会期中公開)
2024  ヌーメン/フォー・ユース 「Tape Echigo-Tsumari」(2024年の会期中公開)
2024  ヌーメン/フォー・ユース 「Tape Echigo-Tsumari」(2024年の会期中公開)
2024  contact Gonzo × dot architects 「十日町パターゴルフ???倶楽部!!」(2024年の会期中公開)
2024  contact Gonzo × dot architects 「十日町パターゴルフ???倶楽部!!」 (2024年の会期中公開)
2024  渡辺泰幸+渡辺さよ 「回る音」 (2024年の会期中公開)
2024  ロブ・フォーマン 「Colony」(2024年の会期中公開)
2024  ロブ・フォーマン 「Colony」 (2024年の会期中公開)
2024  サ・ブンティ(查雯婷) 「神獣の猫龍」(2024年の会期中公開)
2024  丸山のどか 「移動してる(電車)、意識も飛んでる」 (2024年の会期中公開)
2024  Drawing Architecture Studio(絵造社) 「町の散策」(2024年の会期中公開)
2024  原倫太郎+原游 「The Long and Winding River (tunnel and table)」(2024年の会期中公開)

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参考文献 / reference
"越後妻有アートネックレス整備事業計画書"(アートフロントギャラリー,1999)
"大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2000"(越後妻有大地の芸術祭実行委員会,2000)
"大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2000"(越後妻有大地の芸術祭実行委員会,2001)
"大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2003 ガイドブック"(大地の芸術祭・花の道実行委員会東京事務局,2003)
"希望の美術・協働の夢 北川フラムの40年 1965-2004"(角川学芸出版,2005)
"越後妻有アートトリエンナーレ2006 大地の芸術祭ガイドブックー美術手帖2006年7月号増刊"(美術出版社,2006)
"公式ガイドブック 大地の芸術祭アートをめぐる旅ガイドー美術手帖2009年8月号増刊"(美術出版社,2009)
"現代美術がムラを変えた 大地の芸術祭"(北川フラム,角川学芸出版,2010)
"美術は地域をひらく 大地の芸術祭10の思想"(北川フラム,現代企画,2014)
"公式ガイドブック 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015"(現代企画室,2015)
"大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018 公式ガイドブック"(現代企画室,2018)
"大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2022 公式ガイドブック"(現代企画室,2022)
"大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024 公式ガイドブック"(現代企画室,2024)
大地の芸術祭ウェブサイト
Echigo Tsumari Art Field Website
Wikipedia

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